記憶をなぞり未来を描く

それなりに精神が回復してきました、たぶん。
初日は『こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい』とまではいかなくとも、このまま消滅しても世界になにも影響を及ぼさないのだろうとぼんやり思っていて、死にたいわけではないけど常に死のイメージが頭の中にあった。高校生の頃は毎日こういう気持ちで過ごしていたような気がする。こういう時の空はいつも晴れている。
まあまあ限界だったのだと思う。昔も今も。ミクロで見ればいいところはたくさんあるのだけど、パリに行ったら東京に絶望してしまって、だからフランスへの逃亡計画を立てていたのに先行きが見えなくなって、生きてる間にこういう経験をする確率とか、この年齢でそれに当たったことがどう影響を及ぼすのかとか考えて、やっと仕方ないと腹をくくったところにまたうんざりさせられて。どんなに覚悟を決めても逃げられないこの状況でこれ以上絶望させないでほしい。
(おそらく)友人が『パリの砂漠、東京の蜃気楼』という本について「パリから逃れたくなった気持ちも、戻ってきた東京で絶望する気持ちも収められていて好きだった」と書いていて、私が読むべき本な気がしたので買った。私は浪費癖がないと前に書いたけど、本をノーカンにしているだけな気がする。

 

GWは宣言通り、huluに登録してけもなれを毎日一話づつ観ている。あと『架空OL日記』と『たりないふたり』。友人に「hulu入ってけもなれ一気見するんだ」という話をしたら、「ドラマは映画と違って余白込みで楽しむものらしいよ」といわれて納得したので、一日一話にしている。我ながら素直だなと思う。
一日一話ならもっと本数観られるし、観ておこうかなというものもあったのだけど、重たいものは精神的に不可能だった。

人はよく、物理的に可能だけど精神的に不可能だったものについて自分を責めたりしているけど、精神的に不可能だったものは不可能に分類しておくほうが良い。後悔するのなら次に活かせばいいのだ。

 

最近は『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を観ながらご飯を食べている。やはり世界を自分の目で見て回りたいという気持ちになる。
#3の舞台はウラジオストクで、3月に行く予定だった場所だった。ウラジオストクは日本から近く、物価が低く、町が綺麗といわれ、いわゆる”最近キている”観光地だ。でも現実はそれだけじゃない。

旅行好きの先輩に「俺はぶっちゃけ画像検索でも満足しちゃうんだけど、なんで行きたいの?」と聞かれたことがあるけど、私が現地に行きたいのも、あまり観光地に行かないのも、現地のご飯を食べるのも、そういうことだ。
世界を自分の足で歩きたいと思うとき、帰り道に電車から降りたらイヤホンを外すとき、自分の身体が男だったらいいのにと思うけど、LCCや夜行バスに乗るとき、家の湯船に全身つかっているときは小柄でよかったと思うし、どうせないものねだりなのだから自分と付き合い続けるしかない。
『ハイパー〜』を観ていると、人は結局、他人に対してかたくなでいつづけられないのがいいな、と思う。

 

GW3日目くらいからは朝起きると気持ちがすっきりとしていて、これはきたか、と思うのだけど、不意にガクッと下がる。もうだめだ、と思いながらradikoを触っていたら『DJ壇蜜のSM(セレクテッドミュージック)』に救われた。

壇蜜、かわいい人だから好き。ひさしぶりに『黒髪の白拍子。』を読んだりした。高校生の時も壇蜜に救われていたなあ。芸能人の結婚を知ったとき、心から「おめでとう」という感情がわいたのは壇蜜だけだ。

 

洗い物をするのが面倒くさいから、自分を甘やかしてできる限り料理をしないように過ごそうと意気込んでいたのに、結局少しだけが積み重なって毎日洗い物をしている。五徳を掃除しだしたくらいからあきらめた。

夜更かししてやると意気込んでも1時半には眠いし、シャワーも一日浴びなきゃ限界だし、ずっと寝ていることにも耐えられないし、自堕落な生活に向いていない。
自分がだらしないというかダメだなあと思うところは、いつも薄着で部屋を出てスーパーの寒さに後悔するところ。毎年学習しない夏が今年も来る。

 

部屋はいつのまにか片付いていた。どうしてもできなかった書類に捺印をしてポストに出すという行為を終えたので、覚えておかなきゃいけないプレッシャーの分まで余計に使っていた脳のメモリに余裕ができた。バラバラの身体は集め終えた。まだ安定はしていないけど、もう少ししたらまた世界と相対しなきゃいけないな。


目的も終わりも明確でないままだらだらと緊急事態宣言が延長され、徐々に形骸化していくことが目に見えている自粛生活は、これまでの一か月よりもつらいなあ、すでに。きっと世間が完全にそういう空気になったら出かけちゃうと思うけど、でも命を選別することの残酷さや苦痛を医療従事者に押し付けてみないふりをしている(もしくは本当に気づいていない)状況に、現時点では加担できないな、という気持ち。

 

桜はさすがに葉までは綺麗に出なかったけど、もう1ヶ月以上一緒にいたのか。

次は菊を買いました。

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